top of page

人類史上最大の投機的金融バブルの崩壊



2022年10月8日付のGeoplitics誌に掲載された「グローバルに計画された金融津波は始まったばかり」の寄稿者、F.ウィリアム・イングダハルによれば、幾つかの要因で、世界経済が崩壊するとされている。先ず、その詳細を以下で確認していく予定である。米国連邦準備制度が創設されて100年が経過したが、全ての主要な金融市場の崩壊は、政治的な動機に基づいていると、イングダハルは述べている。今般、遂に米国連邦準備制度理事会 (FRB) が金利兵器を使用して、人類史上最大の投機的金融バブルであるバブルを崩壊させようと計画していることは明らかだと、イングダハルは付け加えた。


例えば、1931 年のオーストリアのクレディタンシュタルトや 2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻など、世界的な暴落イベントは常に周縁部から開始する。金融市場が危機的な為に、ここ30年間で最大の単一利上げを課すとした、 FRB による6月15日の通知は決定的であった。現在の世界的不況は、いずれ各国に於けるメルトダウンの証拠であるとも、イングダハルは強調している。


FRB、ECB、日銀が米国債を買い占め、前例のないほぼゼロまたはマイナス金利を14年間維持することで設計した「安い信用」バブルの範囲は、想像を絶するものである。金融に関わるメディアは、世界経済がいわゆる「スタグフレーション」や不況ではなく、毎日の不適切で誤った報道でそれをカバーし続けている。劇的な政策転換が起こらない限り、今後数か月で起こることは、これまでで最悪の経済不況に至ることは必至である。


イングダハルの解説によれば、ダボスなど、グローバリゼーションの背後にある政治的圧力と、1994 年のマラケシュ協定によるブレトンウッズ GATT 貿易規則に基づく世界貿易機関の創設により、欧米、特に米国の高度な製造業がオフショアに逃れ、「外部委託」することが可能になった。これは、極端な低賃金国で生産を生み出すエンジンでもあった。例えば、1990 年代後半に、中国ほど利益をもたらした国は存在していない。中国は 2001 年に WHO に加盟し、それ以来、西側諸国から中国の製造業への資本流入は驚異的になった。中国ドル債務の積み上げも同様である。今、記録的な負債に基づく世界の金融構造は全て崩壊し始めている。


ワシントンが 2008 年 9 月のリーマン ブラザーズの金融崩壊を故意に容認した際、中国指導部は恐慌に陥り、地方政府に前例のない融資を依頼してインフラを構築した。高速鉄道のネットワークなど、その一部は経済危機克服に役立った。その他の世界にとっては、世界恐慌への懸念が後退したため、建設用鋼、石炭、石油、銅などに対する中国の前例のない需要は歓迎された。然しながら、2008 年以降の米連邦準備制度理事会(FRB)と ECB の行動、及びそれぞれ各国政府の行動は、ウォール街やヨーロッパ、そして、香港における世界の主要な民間銀行による組織的な「金融虐待」に対処するものではなかったと、イングダハルは述べている。


ここで歴史を紐解いてみる。1971年8月にニクソンが世界の基軸通貨である米ドルを金から切り離すという決定(金本位制の終焉)を下したことで、世界のマネーフローに水門が開かれた。その後1999年11月にクリントンがウォール街の命令でグラス・スティーガルを廃止して以来、米国および海外での制御されていない金融投機を支持する、これまで以上に寛容な法律があらゆる場面で課せられた。「失敗した場合破局的過ぎる」出鱈目だったが、人々はそれを信じ、何千億ドルもの納税者の金で彼らを救済した。


2008年の金融危機以降、FRB やその他の主要な世界の中央銀行は、主要な金融機関を救済するために、いわゆる「ヘリコプター・マネー」と呼ばれる前例のないクレジットを生み出した。これは実体経済の健全性は目標ではなかった。連邦準備制度理事会、日本銀行、ECB、イングランド銀行の場合、「量的緩和」による債券の購入と、過去14年間に住宅ローン担保証券などの危険な資産を合わせて、25兆ドルが銀行システムに注入された。


イングダハルはこれを、「定量的な狂気」と呼んでいる。世界経済が本格的に悪化し始めたのは、以上のオペレーションによって惹起されたとしている。JP モルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループ、ロンドンのHSBC やバークレイズなどのウォール街最大の銀行は、主要な法人顧客に数十億ドルを貸し出した。結果的に、資金の借り手は流動性を利用して、新しい製造技術や採掘技術に投資するのではなく、自社株の価値を膨らませるために、いわゆる「株主価値の最大化」と呼ばれる自社株買い戻しを行い始めた。これこそ、国際的な金融バブルの元凶である。


BlackRockを筆頭に、銀行、およびその他の投資家は、これに便乗した。2008年のFEDの緩和開始から2020年7月までに、約5兆ドルがこのような株式買い戻しに投資され、史上最大の株式市場の上昇を生み出した。その過程全てが金融化された。企業は、2010年から2019年までの期間に3.8 兆ドルの配当を支払った。ここに至って、危機の深さが分かる筈である。


利益を上げたことのないテスラのような企業は、フォードと GM を合わせたよりも価値が高くなった。ビットコインなどの仮想通貨は、2021 年後半までに時価総額の評価額が1兆ドルを超えた。FRBの資金が自由に流れる中、銀行や投資ファンドはジャンク債やトルコ、インドネシア、中国などの新興市場国債などの、高リスクで高収益の分野に投資した。


イングダハルの指摘では、2008年以降の量的緩和と連邦準備制度理事会のゼロ金利の時代は、米国政府の債務の不条理な拡大に直結している。2020年1月以降、FRB、イングランド銀行、欧州中央銀行、日本銀行は、合計で9兆ドルのほぼゼロ金利の信用を世界の銀行システムに投入した。2019年9月のFRBの政策変更以来、ワシントンは3年足らずで10兆ドルもの公的債務を驚異的に増大させた。その後、連邦準備制度理事会は、月額 1,200 億ドルの米国債と住宅ローン担保証券を購入することで、再びウォール街をひそかに救済し、巨大な債券バブルを生み出した。


無謀なバイデン政権は、経済の不必要な封鎖に対抗するために、いわゆる景気刺激策として何兆ドルもの資金を投入し始めた。米国連邦政府の債務は、1980年の管理可能なGDPの35%から、今日ではGDPの129% 以上にまで増加した。それを可能にしたのは、FRBの量的緩和、何兆もの米国政府と住宅ローンの債務の購入、そしてほぼゼロの金利だけである。現在、FRB は状況を解消して、QT や引き締め、さらには利上げによって経済から流動性を引き揚げ始めている。これは意図的なものであり、FRB がインフレ判断を誤っているということではない。


エネルギーが崩壊を事態の悪化を引き起こすと、イングダハルは指摘する。残念ながら、FRB やその他の中央銀行は嘘を吐いている。金利を上げることは、インフレの治療策にはならない。それは、不動産、農地、商品生産、産業、さらには水でさえ、世界の資産、つまり富を支配する世界的なリセットを強制することになる。FRBは、インフレが世界経済全体に影響を及ぼしていることをよく理解している。独特なのは、現在、産業界全体のグリーン・エネルギー指令が、初めてこのインフレ危機を引き起こしていることである。これは、ワシントン、ブリュッセル、またはベルリンによって意図的に無視されたものである。


イングダハルの指摘によれば、肥料の世界的な不足、天然ガスの価格の高騰、世界的な草案や肥料と燃料の爆発的なコスト、またはウクライナでの戦争による穀物供給の損失により、遅くとも今年の9月から10月の収穫時期には、世界的に追加の収穫が行われることが確実である。食料とエネルギー価格は爆発する。これらの不足は全て、意図的な政策の結果である。さらに、バイデン政権の反炭化水素アジェンダに導かれた、世界の主要な工業経済の病的な主張により、はるかに悪いインフレが確実に起きている。その議題は、米国エネルギー長官が、ガソリン価格の急騰に対する答えとして「代わりに電気自動車を買え」と述べた暴論に代表される。


同様に、欧州連合は、ロシアの石油とガスを段階的に廃止することを決定した。その主要な経済大国であるドイツは、最後の原子炉を閉鎖し、より多くの石炭火力発電所を閉鎖する動きを見せている。その結果、ドイツやその他のEU諸国では、この冬に停電が発生し、天然ガスの価格が高騰し続ける筈である。


6月の第2週にドイツのガス価格だけでさらに60%上昇した。グリーン主導のドイツ政府とEU委員会によるグリーン・アジェンダ「Fit for 55」の両方が、はるかに安価で信頼できる炭化水素を犠牲にして、信頼性が低く、コストのかかる風力発電と太陽光発電を推し進め、前例のないエネルギー主導のインフレを確実にしている。


イングダハルによれば、遂に、連邦準備制度理事会はプラグを抜いたとのことである。ほぼ30年間で最大の0.75% の連邦準備制度理事会の利上げと、今後さらに多くの利上げが約束されたことで、米国中央銀行は今や、米国の債務バブルだけでなく、2008年以降の303兆ドルに上る世界の債務の大部分が崩壊することを確実にした。ほぼ15年後の金利上昇は、債券の価値が崩壊することを意味している。現在では、株式ではなく債券こそが世界の金融システムの心臓部であると、イングダハルは述べている。


現在、米国の住宅ローン金利は、わずか5か月で2 倍の6%を超えており 、住宅販売は最新の利上げ前にすでに急落していた。米国企業は、何年にもわたる超低金利により、記録的な負債を抱えていた。その負債の約70%は、「ジャンク(紙屑)」ステータスのすぐ上に格付けされている。そうした企業の非金融債務は、2006年に合計9兆ドルに達している。


既に今日では、債務は18兆ドルを超えている。現在、これら限界に達した企業の多くは、古い負債を新しい負債でロールオーバーすることが出来ず、今後数か月で倒産が続く筈である。化粧品大手レブロンが破産を宣言した。


ビットコインが主導する、非常に投機的で規制されていない暗号市場は、投資家がそこに救済策がないことに気付くにつれて崩壊していく。昨年11 月、Cryptoの世界の評価額は3兆ドルであった。今日ではその半分以下で、さらに崩壊が進行中である。最近のFRBの利上げの前でさえ、米国のメガバンクの株価は約3,000億ドルを失ってしまった。現在、世界経済の崩壊が拡大するにつれて、株式市場でさらなるパニック売りが確実視されているため、これらの銀行は、今後数か月にわたって新たな深刻な銀行危機に備えて、事前にプログラムされている。


連邦政府は現在、記録的な30兆ドルの連邦政府債務を負担する金利コストがはるかに高くつくことに気付く筈である。連邦債務がほぼゼロだった1930年代の大恐慌とは異なり、今日の政府は、特にバイデンの予算措置以来、限界に達している。米国は第三世界経済になりつつある。連邦準備制度理事会が何兆ドルもの米国債を購入しなくなったら、誰が購入するのだろうか。中国か日本であろうか。これは絶対に有り得ない。


イングダハルは、バブルのデレバレッジについても言及している。即ち、連邦準備制度理事会(FRB)が現在、量的引き締めを課し、毎月数百億ドルの債券やその他の資産を引き出し、主要な金利を引き上げているため、金融市場はレバレッジ解消を始めている。


BlackRockや Fidelityなどの主要なプレーヤーが目的のためにメルトダウンを制御しようとしているため、混乱する可能性がある。然しながら、方向性は明確であるとした。


昨年末までに、投資家は株式を購入するために約1兆ドルの証拠金負債を借り入れた。それは上昇市場である。現在は逆のことが成り立ち、証拠金の借り手は、債務不履行を回避するために、より多くの担保を提供するか、株式を売却することを余儀なくされている。それが今後のメルトダウンを助長する。今後数か月で株式と債券の両方が崩壊するため、何千万人ものアメリカ人の私的な退職貯蓄を手に入れようとする筈である。


米国のクレジット・カードによる自動車ローンや、その他の消費者債務は、過去10年間で急増し、2021年末には記録的な4.3兆ドルに達した。現在、その債務、特にクレジット・カードの金利は、既に16% から急上昇している。これらのクレジット・ローンのデフォルトは急増する。


米国外では、スイス国立銀行、イングランド銀行、さらには ECB でさえ FRB の利上げに従うことを余儀なくされているため、中央銀行の金利が急上昇しているインフレの中で、世界的にデフォルトや倒産が雪だるま式に発生している。もはや、誰もコントロールする力がないと断言出来る。


世界の非金融企業債務の約27%が中国企業によって保有されており、総計23兆ドルと推定されている。さらに32兆ドルの企業債務が、米国とEUの企業によって保有されている。現在、中国は30年ぶりの最悪の経済危機の真っ只中にあり、回復の兆しはほとんどない。中国の最大の顧客である米国が経済不況に陥る中、中国の危機は悪化の一途を辿っている。それは世界経済にとって、決して楽観視出来ることではない。


イングダハルの説明では、例えば、3兆2,000億ドルの国債を抱えるイタリアは、対GDP比150%の負債を抱えている。ECBのマイナス金利だけが、新たな銀行危機でそれが爆発するのを防いでいる。ECBの宥めるような 言葉とは裏腹に、その爆発は事前にプログラムされている。日本は 260% の債務水準で、すべての先進国で最悪であり、7.5兆ドル以上の公的債務を抱えてゼロ金利の罠に陥っている。円安が深刻化し、アジア全体が不安定化しているのが実情だと、イングダハルは語った。


一般に信じられていることとは反対に、世界の金融システムの中心は株式市場ではない。それは債券市場であり、政府、社債、政府機関の債券である。この債券市場は、2021年以降、米国とEUでインフレが急上昇し、金利が上昇したため、価値を失っている。世界的には、これは約250兆ドルの資産価値に相当し、金利が上昇するたびに、より多くの価値が失われる。前回、債券価格が大幅に逆転したのは、40年前のポール・ボルカー時代で、「インフレを抑える」ために20%の金利が設定されていた。


確実なのは、債券価格が下落すると、銀行資本の価値が下落する点である。こうした価値の損失に最も晒されているのは、フランスの大手銀行と EU のドイツ銀行、そして日本の大手銀行である。JPモルガンチェースのような米国の銀行は、大規模な債券暴落にさらされるリスクがわずかに少ないと考えられている。彼らのリスクの多くは、オフ・バランス・シートのデリバティブなどに隠されている。


しかし、2008年とは異なり、今日、中央銀行はゼロ金利とQEをさらに10 年繰り返すことは不可能である。イングランド銀行の前総裁マーク・カーニーのようなインサイダーが、3年前に指摘したように、今回の危機は全ての紙幣が中央で発行され、管理される世界である、新しい中央銀行デジタル通貨を世界に受け入れさせるために利用されるであろう。これは、ダボスWEFの人々がグレート・リセットと呼び習わすことを意味している。これは悪夢に近い現実であると、イングダハルは結んでいる。

閲覧数:14回

最新記事

すべて表示
bottom of page