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計画された「ショック・ドクトリン」の可能性 安倍晋三の死

更新日:2022年7月20日



人権問題の本質:


我々は、人権問題の本質に踏み込まねばならない。例えば人権に関する議論の中で気掛かりなのは、日本維新の会が公表した、憲法に創設する「緊急事態条項骨子」が挙げられる。維新の改憲案は、自民党案を超えて史上最悪である。何故なら、維新は「人権制限」を明記する一方、自分たちの身分を保障する「国会の会期継続、衆議院の解散禁止、内閣不信任案の議決禁止」を新設したからである。維新の会の緊急事態条項には、以下のような人権制限の規定がある。


「緊急事態宣言は発せられたときは、その事態に応じ合理的に必要と認められる範囲において、国民の自由及び権利を制限し、又は義務を課する事ができる。この場合においても、基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」(96条の6)


後述するが、これは、ナチスの「全権委任法」に匹敵する改悪である。さらに、維新の会の改憲案では、96条の3で自分たち国会議員の任期延長の特則を定めている。


「緊急事態条項に基づく宣言が発せられている間は、国会は閉会とならず、衆議院は解散されない」(96条の4第2項)


「緊急事態条項に基づく宣言が発せられている間は、衆議院は内閣の不信任又は信任の議決をすることができない」(同第3項)


つまり、緊急事態条項に基づく宣言を内閣が出しておけば、内閣は絶対に安全が保障されるようになっている。これが通れば、「国民主権」は崩壊する筈である。ここで先に見た、ナチスの「全権委任法」については、本節冒頭で詳しく論じた通りである。


これは、違憲であろうが合憲であろうが、政府が議会を無視して、全権を掌握するということである。事実上の「独裁」であり、国会議員の任期は定まっておらず、内閣不信任案による弾劾も免れるとしている。先に見た、安倍氏の死亡は、ショック・ドクトリンとして働く可能性が出て来たと言えよう。ここで、カナダのジャーナリストである、ナオミ・クラインの著書、「ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く」より、今後想定されるシナリオについて考察を進めたいと考える。ナオミ・クラインの説く「ショック・ドクトリン」とは、以下の定義が明解である。 ―Wikipedia


ナオミ・クラインの説くショック・ドクトリン

クラインは「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べるなど、徹底した市場原理主義を主張したが、こうした主張を「ショック・ドクトリン」と呼び、現代の最も危険な思想とみなしている。そして近年の悪名高い人権侵害は、反民主主義的な体制による残虐行為と見るばかりでなく、民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画され、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきた側面に注目すべきと説いた。


「ショック・ドクトリン」の最初の応用例は、1973年の軍事クーデターによるアウグスト・ピノチェト政権下のチリである。シカゴ学派は投資家の利益を代弁、「大きな政府」や「福祉国家」をさかんに攻撃し、国家の役割は警察と契約強制のみであるべきで、他はすべて民営化し市場の決定に委ねよと説いていたが、そのような政策は有権者の大多数から拒絶され自国で推進することができず、独裁体制下のチリで実行に移されたと述べている。チリでは無実の一般市民の逮捕・拷問・処刑が相次ぐばかりでなく、「惨事便乗型資本主義」がはびこって、「小さな政府」主義が金科玉条となり、公共部門の民営化、福祉・医療・教育などの社会的支出の削減が断行され、多くの国民が窮地に追い込まれた。


以後、天安門事件(1989年)、ソビエト連邦の崩壊(1991年)、アメリカ同時多発テロ事件(2001年)、イラク戦争(2003年)、スマトラ島沖地震 (2004年)による津波被害、ハリケーン・カトリーナ(2005年)といった、政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきた。 ―Wikipedia


今回の銃撃事件を理由に、国家は人権を締め付ける法案を、幾つも出して来る筈である。「公共の安全」と称し、私権を著しく制限する法案が幾つも通る可能性が高い。狙撃された安倍晋三元首相には、何らの罪は無いが、狡猾な昨今の政治家共は、これを「好機」とばかりに、強権的な措置を取らないとも限らない。参議院議員選挙を2日後に控えた今現在、メディアは「自民党」オンリーの報道過熱に沸いている。以下に、自民党が公式に表明した、一通の通達文書を掲載したいと考える。


                                令和4年7月8日                最終日の活動について 本日、わが党の総裁を務めた安倍元すりが遊説先において銃撃を受け、午後5時3分、ご逝去されました。深い悲しみとともに、強い憤りを覚えています。我が国の総理、わが党の総裁として強いリーダーシップを発揮し、内政、外交に大きな成果を残されました。様々なご功績に敬意を表し、哀悼の誠を捧げます。言論が暴力によって封殺されることはあってはならず、民主主義の根幹たる選挙が行われている最中、今回のテロ行為は民主主義に対する挑戦であり、断固講義します。明日は参院選の最終日を迎えますが、暴力には屈しないという断固たる決意の下、各地の事情を踏まえ、選挙活動を進めることにします。また、活動にあたっての安全各自十分留意しての対応の徹底をお願いします。以上



こんな薄っぺらい通知一つで、事もあろうか、元首相の暗殺事件を冷淡に片付けてしまう自民党トップの神経が、我々には分からない。そして、この事件には不可解な面が多い。7月7日付の読売新聞では、長野での遊説を急遽変更して、安倍元総理は奈良での遊説に切り替えたという。テロの準備期間としては、たった1日しか無かったことを示している。そして犯行者が、安倍氏の頸部から心臓に達する狙撃をたった一発で成功させているとしたら、これは訓練された人間にしか不可能な仕業である。海上自衛隊出身であるとの一部報道があるが、全体的に動機が不可解で、理路整然としない。憶測は控えるが、安倍氏の冥福は祈りたい。悪法を施行するのも不合理であるが、テロは断じて容認してはならない。


日米安保の破棄と認知の歪み


これが計画された「ショック・ドクトリン」の可能性を我々は指摘した。以下は、外務省の公表によるものだが、一切の報道が無い為、我々がここに記載するものとする。外務省の公示によれば、事実上、安全保障条約は破棄に近い形に書き換えられ、「締約国(日本と米国)は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する」と明記されている。この意味が分かるだろうか。


つまり、従来の「日米安全保障条約は破棄」されたに等しい。「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」の終焉は、同条第9条に、以下のように明記されている。「千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う」との記述に、日本政府が、何がしかの説明を表明したであろうか。選挙に及んで、彼等は一切を伏せている。これは何故だろうか。米中戦争というスキームで、我々が思考にバイアスを掛けていたからである。以下の記述では、本来考えるべきであった日中間の軍事的脅威を、米中対立にシフトさせてしまった「専門家」による「思考の歪み」を指摘したい。


アメリカの軍事戦略について、軍事専門家・渡部悦和氏によると、米中戦争の勃発とともに、日本国家が必ず戦争に巻き込まれることが指摘されている。西太平洋全域に戦場が拡大する可能性も指摘されており、軍事的には、二段階のオペレーションを米国が選択するとの説明が見える。中国の接近阻止/領域拒否(A2/AD:Anti−Access/Area Denial)への脅威に備えるために、米国はASB(エア・シー・バトル)を展開し、必然的に、日本もこの作戦の範疇に属している。人民解放軍との戦いに於いて、米国は、陸・海・空・宇宙・サイバー空間全域を主戦場としなければならず、かつて無い「強敵」である人民解放軍との戦いに於いて、米国が苦戦を強いられる声が既に上がっていた。「戦略予算評価センター(CSBA)」は、この種のシミュレーションを2030年と想定しており、アジア・太平洋地域の覇権を賭けて、米中は衝突するとしている。日本が、自力で尖閣諸島を護る必要性があるとも指摘されており、第1列島線や第2列島線を含むアジア・太平洋地域を戦場とする以上、日本も在日米軍基地を中心に、戦場となると考えられると指摘されている。


我々は、この種のシミュレーションに、驚きを禁じ得ない。米国の軍事力は世界最大・最強であり、戦争が勃発しても、米国が勝利すると見込んでいたからである。専門家は続ける。ASBの基本は「戦勝」することではなく、中国への抑止力を、米国が示す戦いであるとの明記がある。これは米国及び日本・オーストラリアなど同盟国連携の、「中国封じ込め」の作戦だとする記述があるためである。第一段階では米国の主力部隊は後方に退き、被害を極力抑え、所要の海域に展開する中国の潜水艦を、同盟国たる日本やオーストラリアの潜水艦が、撃破する必要がある。人民解放軍の遠距離情報偵察・攻撃システムを制圧して、敵を盲目化させ、中国の接近阻止/領域拒否(A2/AD:Anti−Access/Area Denial)を破壊して、初めて次の作戦行動に移せると専門家は指摘する。


米国の空母打撃群は初戦には参加せず、日本は独力で沖縄及び在日米軍基地を防衛する必要がある。中国を経済封鎖するためには、米軍と同盟国が「遠距離封鎖作戦」を展開する必要がある。兵站や基地機能の維持のため、継続して基地被害の復旧をしなければならない、とある。つまり、これは日本の本土に、ミサイルが飛んで来ると言っているに等しい。ここまで読んで、我々の背筋は凍り付いたのである。早くから、アメリカのシンクタンクは、以下のように指摘していたからである。現状のまま、尖閣諸島を放置すれば、中国が侵略する可能性が非常に高い。中国海軍は、ここ5年に渡って、格段に海軍の戦闘力を増強しており、現時点で既に、自衛隊の戦力を、はるかに凌駕している。


アメリカのシンクタンクである、「戦略予算評価センター(CSBA)」による報告書「日本の海洋パワーに対する中国の見解」に於いての総括では、中国海軍の火力は威力を増し、日本を屈服させるシミュレートに着手していると分析、仮に中国と日本が全面戦争に至っても、中国は日本を敗北させる戦備を整えたと、ショッキングな報告をしているのである。一部の国会議員を除いて、この国の危難に無関心且つ鈍感な国会議員を、我々は非常に腹立たしく感じている。改憲を高らかに叫ぶ一方で、現実を見ない輩が多過ぎる。「国家存亡」の折り、国を売る者がいる。CSBAの警鐘は、東シナ海でのパワーバランスの崩壊を指摘するものであり、日本が米国と連携を深め、東シナ海に於ける戦備増強に関して、早急に対処することを推奨している。中国は艦艇の火力を上げ、性能を強化し、とりわけミサイル垂直発射装置(VLS)の性能を飛躍的に高めている。現状の自衛隊戦力では歯が立たず、軍事衝突ともなれば、自衛隊は確実に敗北する。中国は、日本(尖閣)侵略の準備を着々と進めて来ており、正に、尖閣諸島を奪わんと計略を練って来た。


「統合幕僚監部」の報道発表資料では、4月29日に、海上自衛隊所属の「くろしま」が、宮古島から160Kmの海域を、中国海軍ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦一隻、ジャンカイ級フリゲート艦一隻及びフチ級補給艦一隻が、沖縄本島と宮古島の中間海域を抜けて、太平洋に向かったことが、報告されている。東シナ海海域に於いて、非常に危険な兆候が増す中、日本の国会議員の大半は、何をやっていたのか。花見騒動に明け暮れ、国会審議を放棄して、中国の覇権行為に、毅然とした態度で臨まない。彼らが本気で国益を考えるならば、CSBAの報告を、どう受け止めるのか、我々は聞き糺したい。国内世論を喚起して、議論を重ねて政策を整え、国民に啓蒙する職責を怠った国会議員は、売国奴とすら呼んでいい。


このまま尖閣を放置すれば、日本の安全保障が大きく脅かされ、遂に、中国の実効支配を許してしまう。日本国の喫緊の課題は、尖閣を始めとする島嶼防衛であり、政治家は、正しく国民に啓蒙すべきである。媚中派を政府与党内、及び売国野党から一掃し、真の国士によって政界を再編する。それが我々の願いであり、現在の国難を乗り越える、絶対に必要な条件だと考えられる。日本政府は一貫して、尖閣諸島に領土問題は存在せず、日本の主権が絶対的であるとの認識を示してきた。然しながら東シナ海に野心を抱く中国は、尖閣諸島を実効支配せんが為に、連日のように武装艦艇を領域侵犯させている。世界で蔓延する、コロナ禍を好機と捉える中国は、尖閣海域への艦船の侵犯頻度を高め、あたかも、自国領だと公言して憚らない。


ショッキングではあるが、恐らく尖閣は、数年の内に中国に簒奪されてしまう可能性が非常に高い。日米軍事同盟が、どの程度「尖閣危機」に対応出来るか、現状では不透明だと言ってよく、国の総力を賭けてまで、大規模な軍事衝突を米国が尖閣危機に際して果たすかどうかは、誰も知り得ない(この点に関しては、冒頭で見たように、安保改定によって、事実上、米軍の作戦行動が必然的に行われる担保は消えている)。以上の経緯には、当然、日本の政治家の怠慢も関わっている。キューバ危機を経験した米国は、尖閣問題を現実的に捉える見方が主流である。センシティブな自衛隊増強論や、改憲すれば事態が好転するといった、日本の保守派の思考は、考えが浅い。尖閣を奪取されてからでは遅い上に、一国を揺るがす大事変だと考える視点が足りていない。これがアメリカの主流の意見である。日本が改憲すれば、中国による東シナ海覇権の野望を挫くことが果たして出来るのか、疑問に思う向きが専門家の間から出ている。日米安保条約第五条に則って、有事の際、軍事的なオペレーションが発動する筈だった(注)が、主体である当事国はアメリカではなく、日本自身が専守防衛に徹する必要がある。自衛隊増強や改憲には強く賛同するが、米国シンクタンクの主張のように、国家総動員での防衛意識を国民全体が共有するのが望ましい。


(注)新しい改定条約の中身は以下の文言に変更されている。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と、改定が行われている。


CSBAの警鐘は、東シナ海でのパワーバランスの崩壊を指摘するものである。自衛隊は装備で中国に破れ、劣勢に立たされているのを見過すべきではない。海防を怠れば、国の存亡に関わる。そうした通念が、歴史的に受け継がれていれば、何ら焦る必要は無い。然しながら、「国軍創設」「軍備拡張」は、依然として正しく机上に登っていない。繰り返すが、中国海軍の火力は威力を増し、日本を屈服させるシミュレートに着手していると分析しており、仮に中国と日本が全面戦争に至っても、中国は日本を敗北させる戦備を整えたとCSBAは警鐘を鳴らしている。2021年にも、尖閣諸島に軍事基地を作ると、トランプ元大統領は語ったが、安保が改定及び破棄されたにせよ、極東アジアの安定の為に日本も中国への警戒を更に強め、米国と歩調を合わせて、断固、中国を寄せ付けない覚悟が必要である。


安倍晋三の死の意味するもの


安倍晋三氏の死には、宿世の因果を感じる。図らずも、1960年代に岸信介(安倍晋三の祖父)が暗殺未遂にされて以来、この一族は、「憲法」を巡る問題に政治生命を見出してきた。自由民主党の立党理念である改憲も、この血族に縁があるものだった。


改定前の日米安保条約を詳しく調べると、以下の事実が浮かび上がってくる。


元より米国側には、日本に対する「防衛義務」など存在していなかった。具体的には、日米安保条約第5条発動に相当する事態が生起した場合には、アメリカ合衆国憲法第2条(大統領の権限)ならびに「戦争権限決議」(日本では「戦争権限法」と呼ばれる)などに従って対処するということになる。要するに、日本に援軍を派遣したり、日本を攻撃している軍隊に反撃を実施したりするのは、連邦議会の決議を受けるか、連邦議会の承認が確実な状況の場合には、大統領の責任において決断されることになる。いずれにせよ、連邦議会の賛意が必須である。米軍が勝手に動くことは有り得ない。 ―JBpress 木村淳


当然、日本政府は、この動きを受けて、憲法改正をせざるを得ない。特に違憲状態の9条から真っ先に手を着ける予定だが、戦前の「新聞条例(言論弾圧)」や「集会条例(徒党禁止)」などに結びつく、復古的とも言える「緊急事態条項」の制定も、抜け目なく履行する筈である。確実に、我々の「人権」は制限を受けるであろう。


Shinzo Abe's death could be a planned "shock doctrine."

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